その恋、記憶にございませんっ!

 案内の女性は可愛らしく、本田はさっきまでとは全然違う、ウキウキした態度で、
「では、頑張ってください、唯様、蘇芳様」
と言うと、女性の肩を抱きかねない勢いで、さっさと行ってしまった。

「……なんか早々に裏切られましたね」

「これがRPGなら、展開が早過ぎると文句を言うところだ。

 ――唯」
と呼びかけ、蘇芳はその大きな手で、唯の手をがっちり握ってきた。

 逃すまい、というように。

「此処は夫婦(めおと)で頑張ろう」

「まだ結婚してないです」

 すげなく言い返したが、そのまま、中央の螺旋階段を一緒に上らされる。

 どうやら、その階段は、最上階まで突き抜けている直通の階段のようだった。

 仕方なく共に上がって行きながら、『まだ結婚してない』って言い方もちょっとあれだったなー、と今更ながらに照れる。

 ふいに出る言葉って、おのれの本当の心を表しているというけど。

 いやいや、そんなことないし。

 いや、ほんとーに……と思いながら、唯は蘇芳と階段を上がって行った。