その恋、記憶にございませんっ!

「お邪魔したんでよかったんですか?」
と本田が言うと、

「いや、不正解です、とだけ言ったら、帰ってくれてよかったんだが」
と呟く蘇芳に、本田は何故か笑っていた。

 唯は、
「またですか」
と言った彼を見、蘇芳に訊く。

「蘇芳さんが本田さん、呼ばれたんですか?」

 もう疲れて、帰り運転したくなくなったのだろうかな、と思ったのだが、どうもそうではないらしい。

「蘇芳様、奥様からご伝言です。

『正午に来い。
 別荘にて待つ』

 ――だそうです」

「……果し状か」

 望むところだと伝えて来い、と蘇芳は本田に言っていた。

 だが、
「いえ、伝えられません」
と本田は言う。

「蘇芳様と唯様を連れて別荘に来るよう言われておりますので、私ひとりでは参れません。

 ……来てくださいよ、絶対。

 クビ、飛びますからね、私。

 いや、クビくらいなら、まだいいですけど。

 本当にクビが飛んでいきそうなんですからっ」
と蘇芳の母からの制裁を思い浮かべ、本田は震える。