その恋、記憶にございませんっ!

 さっき話した怪談で、
『お前の髪だ~っ!』
と髪を掴まれたときの唯より恐怖の表情をしていたと思う。

 だが、つかんでいたのは唯だった。

 眠っている唯は、ふふ、と笑い、抱き枕かなにかのように自分の手を抱え込む。

 ……ちょっと幸せだ。

 だが、このあとはどうしたらっ? と思っていると、唯が自分の腕だけを抱いたまま、
「蘇芳さん」
と呼びかけてきた。

「はっ、はいっ!」

 何故、改まるっ、俺っ!
と思いながら、次の言葉を待ったが、なかった。

 唯は微笑んでいる。

 信じてますからね、というさっきの言葉が頭に浮かぶ。

 ど、どっちが正解だ、唯……

 ……どっちが

 どっちが……?