その恋、記憶にございませんっ!


 



「しかし、唯。
 結婚まではって言ったってことは、お前、俺と結婚するんだよな?」

 まったくキャンプからかけ離れたようなヒノキ風呂で、まったり天然温泉を楽しんで出てきた唯に、蘇芳がそんなことを言ってくる。

 風呂もよかった。

 庭には焚き火が灯され、いい感じだったので、ガラス張りの風呂場から、ぼんやりそれを見ながら浸かっていた。

 だが、ぼんやりし過ぎて、蘇芳に、ええー? と反論するのが、かなり遅れてしまった。

「しませんよ、結婚っ。
 此処の代金も、出世払いで返しますっ」

「いつ出世するんだ。
 素直に玉の輿に乗れ」

 いや、返します、と言った唯は、
「そうだ。
 泊まる部屋も別でお願いしますね」
と言うと、蘇芳は、

「まあ、部屋は好きなところを使っていいが」
と幾つかあるベッドルームを振り返り言ってきた。

 おや、意外にいい人だ、と思っていると、蘇芳は窓の向こうの焚き火を見、
「ちょっと外で呑むか。
 チーズでも焼きながら」
と言ってくる。