その恋、記憶にございませんっ!

 





 買われてしまいました。

 『誠』と書かれたTシャツを。

 おじいさまとやらにご挨拶に行くのなら、ある意味、相応しいのかもしれません……。

 しかし、こちらの事情はともかくとして、蘇芳さんのおじいさまから見れば、私は、既に婚約者の居る蘇芳さんと結婚しようとしている女なわけで――。

 これを着て土下座とかすると、頭を下げた瞬間に、斬り殺されそうだな、と思っていた。

 それにしても、こんなのもあったのか、とそのTシャツを見ながら思っている間に、そのおじいさまの別荘近くにあるという宿に着いていた。

 その宿はまだ新しく、どうやら、グランピングの出来る宿らしかった。

「グランピングってあれですよね。
 ちょっとだけキャンプ気分が味わえるっていう」

「そうだ。
 ホテルに泊まりつつ、なんとなくキャンプっていうか。

 お前はその程度でいいだろう」
と言われ、確かに、と唯は苦笑する。