その恋、記憶にございませんっ!

「実はその泊まる宿の近くに祖父の別荘があるんだが、今、そこに行ってるらしいんだ」

「はい?」

「さすがのうちの母親もじいさんには頭が上がらないから、ちょっと味方になってもらおうかと思って」
と言いながら、

「お、これがいいんじゃないか?」
と上を見て選び、下にビニールに入って積まれているTシャツを一枚取ると、唯の手からトラベルセットを取る。

 そのまま、レジに行く気のようだ。

「まま、待ってくださいっ。
 それ、誰が着るんですかっ」

 根性とか、命とか、烏賊とかっ、とすがりつくと、

「お前だろう。
 レディースって書いてあるから」
と迷わず、レジに突き進みながら蘇芳は言ってくる。

「着心地良さそうだぞ。
 物がいいらしい」

「いや、あのっ、おじいさまにお会いするんですよねっ?」

「大丈夫だ。
 お前はなにを着ても可愛い」

 限界があると思いますっ!