その恋、記憶にございませんっ!

 ん? と思っていると、蘇芳はカレンダーにある、衣装打ち合わせの文字を見、言ってきた。

「唯。
 金が戻ってくることだけが家族の幸せとは言えんぞ」

 えーと。

 昨日、お前に俺の財力を見せつけてやるとか。

 お前を買い取れるだけの金はあるとか言って、私の頬を札ビラではたこうとした男がなにか言ってますよ~、と思いながら、

「調べたんですか?」
と上目遣いに睨みながら訊くと、蘇芳は、何故か視線を少し唯から外した状態で言ってきた。

「昨日、早速、宮本がお前の素性を調べたようだ。

 だが、まあ、調べるまでもなかったんだがな。
 お前、自分で、ペラペラ、フライドチキンに向かって話してたから」

 フライドチキンのおじさんですよ……と思いながら、

「あれ? 私、結局、フライドチキンのおじさん連れて帰ってたんですか?」
と訊く。

 違う、と蘇芳は言った。

「俺をおじさんだと思って話してたんだ」

「……止めてくださいよ。
 そういえば、あれ、結構重いはずなのに、どうやって持って帰ったんだろうなとは、酔った頭でも思ってたんですよ」

「俺は、お前に手を握られ、自力で歩いてきた」

 ですよねー……。