その恋、記憶にございませんっ!

 土産の蕎麦でも買えというのか、と思いながらも、一応、見回した。

 泊まるって……

 なにがいるんだっけ?

 いや、本気で泊まる気ではないのだが、と思いながら、とりあえず、化粧品を探す。

 なんかご当地ものみたいなのがいっぱいあるな。

 名産のゆずを使った化粧水とか、豆乳ローションとか。

「お、これがいいんじゃないか?」
と蘇芳が手にしたのは、地酒の名前が入った化粧品だった。

「お前、酒、好きだろ?」

 いや、呑むのが好きなんで、化粧品は呑むわけじゃないんで……と思いながらも、なんだか肌に良さそうなので、トライアルセットを買ってしまった。

 次は服を探して見回すが、隅の方に手作りのエプロンらしきものしかない。

 着物の柄を合わせたようなデザインで素敵だが、エプロン、今買ってもな、と思っていると、
「唯、Tシャツがあるぞ」
と蘇芳が言ってくる。