その恋、記憶にございませんっ!

 



 朝はコンビニ、昼は海岸沿いの回転寿司。

 一体、私はいつ美味しいものにたどり着くのでしょうか。

 いや、美味しかったですけどね、と思いながら、唯は蘇芳の車に乗っていた。

 ただ、どちらも家の近くで食べられるものだったような。

 この人、単に、ようやく来た車で走りたかっただけなんじゃ、と相変わらず、すごい音で人を振り返らせる車を楽しげに運転している蘇芳を見た。

「楽しいな、唯」
と前を見たまま、機嫌よく蘇芳は言ってくる。

 ええまあ、楽しくないことはないですね。

 コンビニのサンドイッチも珈琲もハズレはないし。

 海沿いなせいか、回転寿司もいつもより美味しく感じられたし。

 時折、窓を開けると吹き込んでくる海風も悪くないです、と思っていると、

「ようやく、この車に乗れたし。
 お前と居るだけで、ドキドキするし。

 俺は楽しい」
と蘇芳は言う。

 唯は沈黙した。