その恋、記憶にございませんっ!

 




「後つけなくていいんですか?」

 宮本が屋敷内の清掃具合を見回っていると、外から帰ってきた本田がそう言ってきた。

 出かけた蘇芳を見張らなくていいのかと言いたいらしい。

「今日は奥様が帰って来られるから」

「へー、こちらにですか。
 珍しいですね。

 ああ、それで事前に、家具の配置がどうのこうの言ってこられたんですね」

 相変わらず、めんどくさい人ですねー、と本田は遠慮会釈なく言っている。

 そう。
 もともと奥様が帰ってくる予定ではあったのだか。

 どうもなにやら、きな臭いな、と宮本は思っていた。

 もしや、御前から、唯様のことを聞かれてとか? と思う。

 この間、唯のことを知った蘇芳の父に頼まれて、本田が唯のアパートまで連れていったようだ。

 遠くからでもその姿を窺ってみようと思ったのだろう。

「でもほんと。
 蘇芳様が唯様とご婚約されたら、今の蘇芳様の婚約者の方はどうなるんですか?」

「あれはどうにかなるだろうよ」

 本人はたぶん、大丈夫だ。

 問題はひとつだけ。