その恋、記憶にございませんっ!


 




 蘇芳が部屋へと上がっていったあと、宮本は彼が消えた階段を見ながら本田に言う。

「蘇芳様、可愛いだろう?」

「なーんか憎めませんよね。
 金持ちでイケメンで仕事も出来て、あんな可愛い彼女までゲットしようとしてるのに。

 なんででしょう?

 素直だからでしょうか。

 あの詰めの甘さが災いして、今にも誰かに唯様をかっさらわれそうだからですかね?」

 そう呟いたあとで、本田は宮本を振り向き、言ってきた。

「……ところで、誰に賭けますか?」

 唯様の結婚相手、と言う。

「じゃあ、大穴で、桝谷慎吾」

「じゃあ、僕は、もっと大穴で、桝谷翔太で」

 いや、お前ら、俺に賭けろよ、と蘇芳が聞いていたら、思っていたことだろう。