その恋、記憶にございませんっ!

「ともかく、唯。
 ゆっくり二人で話そう」

 翔太は、チラとアパートを見上げたあとで、
「こんな壁の薄いところじゃなくて、何処か二人で、ゆっくり出来るところで」
と言ってくる。

 壁薄いと、なんで駄目ですか。

 殴られる?

 蹴られる?
とよくわからない妄想が駆け巡り始めたとき、

「お待ちください」
と声がした。

 なんとなく宮本を思ったが、声が少し幼い感じがした。

 見ると、本田が立っていた。

 仕事中のようで、いつものドライバー用の制服を着ている。

「お前か。
 よくも昨日は、俺を家に送り届けてくれたなっ」
と本田を睨み、翔太が言った。

 いや、その言い方、なんかおかしいような、と思ったあとで、

 待てよ。
 そういや、なんで、翔太さん、素直に送り届けられたんだろうな? と思っていると、翔太は、

「今日はなにをしようと、唯は離さんぞっ」
と腕をつかんだまま、必死に本田を威嚇している。

 ……昨日、なにされたんだろうな、とそれを見ながら思っていた。