その恋、記憶にございませんっ!

 




 なにやら怒涛の展開だった。

 今日、なんの仕事をしたのか、いまいち記憶がない。

 あとで、いろいろ間違いが発覚しそうで怖いな、と思いながら、唯は自宅に帰ろうとしていた。

 電車を降り、この時間帯、人通りの少ない住宅街の道に入った辺りから、誰かが自分をつけて来ている気配を感じた。

 ……痴漢?

 変質者? まだ明るいけど。

 日が長くなってきたので、七時過ぎまで今は明るい。

 唯がなんとなく早足になると、後ろの人も早足になった。

 ヤバイッ!

 気のせいじゃないかもっ。

 唯は脱兎のごとく走り出す。

 気づかないふりして、さりげなく近くの店にでも入った方がいいとわかっていたのだが、相手が自分より早足になった気がしたからだ。

 いやーっ、神様ーっ。

 蘇芳さんっ!

 いや、それよりもっ。
 今にも現れそうな、宮本さーんっ! と思わず、宮本を呼んだとき、

「あ」
と気づいた唯は急ブレーキをかけ、少し戻る。

 すると、自分の横を誰かが走り抜けていった。