その恋、記憶にございませんっ!

 



 翌朝、会社に行きたくないなー、と唯は思っていた。

 翔太が会社に来ていそうだ、と思ったからだ。

 翔太さん、早くボストンに帰ってくれないかなー。

 よく考えたら、破談の話をきちんとしてから帰ってくれないと困るのだが。

 顔を合わせたが最後、あの洗濯機の水流のような訳のわからない翔太の勢いに呑み込まれていってしまいそうな怖さがあった。

 だが、出社しないわけにも行かず、職場に行くと、案の定、すぐに会長室に呼ばれた。

 唯が着いたとき、既に翔太は揉めていた。

「なんで俺の方が引かなきゃならないんです。
 後から湧いてきたのは、あの男の方ですよ」

 いや、その点に関しては、ごもっとも、と思いながら、扉近くに控えていると、翔太はこちらを振り向き、
「唯。
 お前からもジイさんに、なにか言ってやれ!」
と言ってきた。

 いやいや、待って。

 破談にしたいの、私なんで……と思いながら、黙っていると、翔太は会長に向かい、熱く語り出す。