その恋、記憶にございませんっ!

 



 ざっくりな前田の家は、家老の家もざっくりだったようだ、と思いながら、唯は蘇芳の部屋で、また珈琲をいただいていた。

 今日は眠れなくならないかな。

 続けて飲んでいるが、と思いながら。

 窓際の椅子に向かい合って座る自分と蘇芳の横に宮本が立って語っている。

 蘇芳が言った。

「お前、あのとき、一瞬で、唯の身辺調査をしたのかと思っていたが、最初から、唯のことは或る程度知っていたんだな」

 はい、と宮本は頷く。

 唯が、
「私とは面識なかったですけど。
 翔太さんたちとはあったんですね?」
と訊くと、

「はい。
 前田家の皆様の前に顔を出すなどととんでもないと母は申しておりましたが。

 桝谷の家の者には特にこだわりはありませんでしたので。

 特にあの、翔太とか桝谷慎吾とかいう下郎どもには、気を使う必要もございませんから」

「え? 慎吾さんも下郎?」

 案に翔太は下郎でいいと認めて唯は訊き返す。