その恋、記憶にございませんっ!

 宮本の顔を凝視したあとで、
「お前っ、三郎丸かっ」
と言い出す。

 えっ? 知り合いっ?

 っていうか、三郎丸ってなにっ?

「おのれ、三郎丸っ。
 裏切ったかっ!」

 ……なんだか時代劇じみて来た。

 そろそろ誰かがガマに乗ってどろんと消えても驚かない……と思っていると、
「ねえ、これ、なんの騒ぎ……?」
と言いながら慎吾が現れた。

「それが――」
と説明しようとすると、正面の大きなガラス扉から、タクシーを降り、こちらに来ようと走ってくる蘇芳が見えた。

 今にもガマに乗って戦いだしそうな二人に、蘇芳。

 思わず、
「逃げてっ!」
と唯は、誰にともなく言っていた。

 え? 逃げる? と三人が振り向く。

 誰が?

 何故?

 なんのために? とその顔には書いてあったが。

「いや、なんか蘇芳さん来ると余計話がややこしくなりそうだから、とりあえず、逃げてっ」
と言うと、

「はいはい、こちらへ。
 お送りしますよ、桝谷翔太様」
と言いながら、裏口から現れた本田が宮本ごと二人の手を引き、連れ出そうとする。