その恋、記憶にございませんっ!

 




 次の日、唯の許に蘇芳は来なかった。

 電話もないと思ったが、よく考えたら、固定電話はなく、携帯の番号は教えていない。

 目が覚めても、枕許に座っている男の人もフライドチキンのおじさんも居ない。

 こうしていると、全部夢だったような気がしてくるな、と思いながら、唯は欠伸をし、布団をたたむ。

 今日もいい天気だ。

 お昼はみんなでお弁当買って、外で食べてもいいかな、と思う間も、なんだか蘇芳のことが頭をよぎっていた。

 蘇芳さんは、なんで私と結婚しようとしてるんだろうな。

 別になにもなかったのなら、プライドがどうとか言って、結婚しなくてもいいような気がするんだが――。

 でも、宮本さんが言う通り、なにもしなかったのなら。

 あの人、私が寝てる間、ずっと枕許に座って手を握っててくれたのか。

 唯はさっきまで布団のあった場所に座ってみる。

 あのとき、正座していた蘇芳と向き合うように正座してみた。

 そうすると、彼がなにを考えていたのか、わかるような気がしたが。

 ……まあ、気のせいだった。