だが……




「腰、まだ完全に治ってねぇだろ」




戸崎はあたしの髪に触れながら言う。




「時間はたくさんある。

まずは、元気になることだけ考えろよ」




戸崎は優しくあたしを抱きしめてくれた。

その強い身体に、甘い香りに、優しい息遣いに酔った。

そして、戸崎の胸の中で心地よい眠りに落ちていった。




世の中に、こんなにも愛しいものってあるのだろうか。

五年前は、どうして気付かなかったのか。

いや、五年前とは明らかに変わったんだ。

溺れる……

まさにその言葉の通り、あたしは戸崎から抜け出すことが出来ない。