「お兄さんは君の目に気付いているのかい?」

「私は兄ではないので知りません。それに最近はすれ違ってばかりで逢ってすら無いです」

確かに、ERだと家に帰ることすら難しいかもしれない。

「僕の連絡先を渡しておくから気が向いたら電話して」

僕は彼女に名刺を渡した。

すると彼女は紙を見て訝しげな表情をしている。

「何故、私に連絡先を渡すんですか?」

「君が気になったから」

「普通の女の子なら勘違いするような台詞を言わないで下さい」

確かに、一歩、間違えれば彼女に好意を寄せているようにも取れる発言だった。

「君の直感と推測が気になった。あと、目がね」

「先生が言っている意味が理解出来ないです。まぁ、理解しようとも思ってないですが」

彼女はそう言うと真っ直ぐと駅に向かっていった。

僕は追いかけずにその場に留まることしか出来なかった。