「おじゃましまーす。」


荷物を持って璻のマンショの扉を開けると中から璻が来た。


「おじゃましますじゃねーだろ。」


「え?」


「おかえり。」


「・・・・・・・ただいま。」


「うん。それでいい。」


こんなに優しく誰かにおかえりって言われたの初めて。


璻は私が知らない感情を教えてくれる。


それはきっと勉強よりも大切なこと。


「こっちの部屋使っていいから。」


言われた部屋に荷物を置く。


「そういえば、お母さんから連絡あったの?」


「・・・・・・うん。勝手にしろだって。」


「そうか。・・・・・・じゃあ遊びに行くぞ!!」


そう言うと私の手を取って玄関を出る。


「え?どこに行くの?」


「着いてからのお楽しみ!!」


高校3年生の夏、今から私の知らない夏が始まろうとしている。


それはきっと今までで1番輝いていて、最高の思い出になる。