□沙耶side■



「パーティー?」


父親が箸を止めて、自分の顔を驚いたように見てきたので、頷いた。


「うん」


「珍しいな、沙耶。君はそうゆうの、嫌いやったんやなかったか?」


「うん、大嫌い」


4月29日。


沙耶は夜ご飯を食べながら、父親の健斗と話していた。

水樹に誘われたパーティーのことを健斗に切り出したら、返ってきたのはその言葉。


嫌いなものは嫌いなので、にっこり笑いながらそう返せば。


「なんや、嫌いなのに行くんか?」


嫌いなものは徹底的に追い詰めて叩き潰す派の健斗は、自分と同じ性格をした最愛の妻似の沙耶を見て、苦笑した。


「お願いって頼まれたの。嫌だけど……行くしかないでしょ?なら、せっかく身に付いている礼儀作法で乗り切ろうかなって」


残念ながら、性格がお嬢様らしくはない私は、これでも一応、一通りの習い事、お嬢様としての礼儀作法は受けてきているので、何でも出来る。


そんな沙耶の決意を一蹴したのは、父親の健斗。


「…無理やない?」


どうやら、自分と娘が性格がそっくりだと自覚があるらしい。


「君、ヴァイオリンよりもピアノよりも、竹刀や銃を持ってる方が好きやろ?」


「…」


「ドレスよりもパーカーを好むし…」


「…」


「…無理やろ」



…ちゃんと、それなりの教育は受けてきた。


受けさせてもらった。


目の前の父親に。