「端から見れば、そつのない大人。けど、やっぱり、高校生だ。……沙耶を助けてくれたことに関して、父親として、沙耶のただの同級生の君に礼を言う」


(……やっぱりな)


勘違いではなかった。


嫌な予感は的中した。


大体、”黒橋”って名字の時点で気がつかなかった俺は、相当にボケているらしい。


「沙耶のお父さん、ですか……」


意外と言うか、この人が父親と言われたら、沙耶の変な性格も納得してしまうから、恐ろしい。


「そうだよ。気がつかなかっただろう?俺達は、ほとんど家にいないからな」


「そう言われてみれば……いないことの方が多いですが、仕事ですか?」


結果、ご飯を食べることを面倒くさがって、沙耶は空腹でぶっ倒れる。


……今回も、それが一原因であった。


「ああ。……まぁ、家を空けてるのは、別の大きな理由があるんだがな……」


「はい?」


「いや、何でもない。……ところで、沙耶と一緒になんかいて、苦労はしないかい?」



最近も、こんなことがあった。


沙耶に関係することで、誤魔化されることが。


一体、沙耶はどんな女なのか。


「……鈍い、とだけ、言っておきます」


今の相馬に言えることはなかった。


沙耶の事はなにも知らない俺には。