「氷月、要点をまとめて話せ」

「わかった」

「ちょっと、氷月!俺がっ…」

「五月蝿い」

騒ぐ水樹を無視しながら、氷月は言い放った。


「俺と水樹が見つけた、唯一無二」


それは、女を指す。


生涯、愛し抜くことになる女だ。


「千尋は、ついてくると言った。夕梨は、わからないけど」


千尋が氷月で、夕梨が水樹の唯一無二。

それぞれ、かつての恋人。

かつて…そう、もう、遠い、遠い、過去の。


「どこの学校だ?」

「華西高校。夏翠たちが行った高校だよ。そこで、薫たちが見つけものをしたらしくてね」

夏翠たちが行った学校…。

ああ、あの雪さんが仕込んだ学校か。

『学校サボるなんて、学生の本分を忘れているだろ?だから、思い出させるんだ。ちょっとは、お灸を据えないとな』

雪さんのことだから、なんだかんだ言って、無駄なことではないはずと思っていたが…やっぱりか。

「見つけもの?」

薫には、既に唯一無二がいる。

眠ったままであるが。

関東一に立つ家、焔棠家の若頭。

「うん、その確認を、俺らはしてくるよ。姉さんには、話してあるから。手続き、お願い」

焔棠薫は、相馬たちの幼なじみで、遠い、過去に関係のある人物である。

夏翠というのは、姫宮夏翠。
彼女もまた、相馬たちの幼なじみである。

この二人が中心となって、行った学校。

そこで何を見つけたのだろうか。


「…分かった」

姉さんに頼んでいるならば、ひとまず安心である。


相馬は五人兄弟の真ん中だ。
上に兄と姉が一人ずついて、両親がいない俺らにとって、姉さんがこの御園を仕切っているような感じ。

この弟たちにも、手伝ってほしいのだが…。

学生の本分は勉強なので、致し方ない。


「気を付けろ」

命を狙われることが多い、俺達。

それは、この家に生まれたがゆえの宿命だ。

水樹ははにかんで、氷月はそっぽ向いて。


「兄さんにも、早く見つかるといいね」

「唯一無二」


双子ゆえか、考えていることも同じらしく。



「ばーか。女なんて、ごめんだよ」


双子が出ていった静かな部屋で、相馬は一人呟く。


少しずつ、過去の傷が、疼き出す。