「じゃあ、夏翠もそうなの?澪も?……私や、柚香、真姫は良いよ。出会ったばっかりだし、私なんて、初対面であんなことしたから。でもさ、幼い頃から一緒にいる幼馴染みは違うでしょう?」



少なくとも、そうではないはずだ。


桜という子だけを愛し、女を毛嫌う薫でさえも夏翠の前では、普通の男子高校生なんだから。


「この世界には、男と女しかいない。その中の女を一つの大きなグループにして、一纏めなんて……あんな女たちと一緒にされるなんて、最悪だわ」


相馬の回りにたむろっていたのは、沙耶が最も苦手とする女たちの集団だった。


笑いあっているくせに、目が笑っていなくて、無駄に着飾っているくせに、回りを羨ましがって。


お嬢様らしくなりたいとも、お嬢様らしくなろうと思ったことはない。


贅沢な暮らしを望んだことだってない。


沙耶が望むは今も昔も笑える未来を作ること、だから。




沙耶の振り上げた手は、高い音をたてて、相馬の頬を張った。


バシッ!


「……トップに立つ人間なら、本質を見極めろ。女をナメんじゃない!女は覚悟を決めたら、強いの。勝手に決めつけて、勝手なことを言わないで!!」


幼い頃から、アイラを失ったあの日から、ただ、ひたすらに沙耶はいろんなことに励んできた。


それがいつか、役に立つことを信じて。


なのに、この男はすべてをまとめあげた。


それが一番、許せない。