しばらく無言で歩いた。
その大きな手を握って。
平静を装うが、胸は焼けそうに熱く、鼓動は止まりそうに速い。
戸崎が好きだ。
戸崎が大好きだ。
やがて、戸崎はぽつりと言う。
「明日は仙台で試合だから会えねぇ」
分かっていることだが、胸がきゅーっと痛んだ。
一日戸崎と会えないだけで、こんなにも切ないなんて。
もっと、ずっと、一日中戸崎といたい。
だけど、
「あんたに会えなくても大丈夫だよ」
あたしは可愛くない言葉を吐く。
昔からそうだ。
あたしは戸崎に素直になれない。
戸崎は、
「相変わらずキツイ女だな」
なんて満足そうに笑う。
その面白そうな笑いは昔のままの戸崎で、正直ホッとしたんだ。