ここで、ふと昔の出来事を思い出す。

俺が使われていない部屋で名前も知らない女性を抱いていた時……

山形に見られた。

その後平気な顔をしていた山形に俺は安心していたが……

きっと、泣きそうになるのを堪え、平静を装っていただけだ。

俺が想像出来ないほど、山形は苦しんでいたに違いない。




山形は強い女だ。

だから俺は、その強さに甘えていたんだ。









呆然と立ち尽くす俺の耳に、玄関のチャイムの音が飛び込んできた。

扉を開けると、ずぶ濡れの山形がいた。

……文字通り、ずぶ濡れだった。