その声を聞いた瞬間、胸が熱くなる。

駄目だと分かっているのに、抱きつきたくなる。

涙を必死に我慢し、口元を押さえて見た先に、彼はいた。

松葉杖をついて、いつものようにビルにもたれかかって。





「……はぁ?

あんた、馬鹿じゃない?」




可愛げのない言葉が溢れてくる。

こんな時、もっと素直に甘えることが出来たら、どんなに可愛いんだろう。




「なんで負傷してまで、あたしを待ってるの?」