「素子のクセに生意気……!!」

「『弱い犬ほどよく吠える』とは言ったものだけど。あなたたち、ほんと煩(うるさ)いよね」

「っ、」


どうしたの。

ほら。

そんな悔しそうな顔しないで、言い返してきなよ。

二人で。


まとめてわたしが論破してやるから。


「……エリカ、コイツしめちゃおうよ?」

「…………」


エリカは腕を組んだまま黙っている。

菜々の問いかけに答える様子もない。


「エリカ? どうしたの?」


愛美にそういわれ、エリカがクスッと笑ってわたしを見てこういった。


「なんだ。ただの人形じゃなかったんだ?」


どこか楽しそうな様子の、エリカ。


怒りを露にさせている愛美と菜々と違って笑顔のエリカが奇妙でならない。


「無抵抗な人形ほどダメージの与え甲斐のないものはないもんね」


——!!


ゆっくりと、わたしに近づいてくる。


一歩。


また、一歩。


「ふぅん。それが優等生、木乃素子の本性なんだ? ボロをだすくらいあの教師のことが大事なんだ?」


……やばい。


この子は、やばい。


「そっか。だったら、もっと楽しませてもらおうかな。高校生活は始まったところなんだから。ね?」


嬉しそうに微笑むエリカの顔を見て、わたしは心底後悔した。


この子は、絶対に敵にまわしちゃいけない相手だったんだって。