言ってやりたいのに。


……なにも、言えない。


「なにをやっているんだ?」


教室に入ってきた担任が黒板を見て唖然とする。


「なんでも、ないです」


そこでやっとわたしの身体は動いて黒板まで歩いて行くと、黒板消しを手に取った。


誰も消すのを手伝ってはくれない。

担任も。


手伝うどころか、ため息をつくと

「はやく片付けなさい」と冷たく言い放つ。


ラクガキのこともわたしのことも気にもとめずに、出席を取り始めた。


その光景が愛美と菜々のツボに入ったらしくバカにしたような笑い声が聞こえてくる。


この場にいる全員が――クラスメイトはおろか、担任までもが敵に見えた。


真面目な千夏も、このときばかりは傍観者で。

エリカのグループの前で目立つ行動に出る者なんていなかった。


このクラスには、

わたしの味方なんて一人もいない。