「英語のノートは?」

「あれは……諦めます」


トイレの床で踏んづけられたんだ。

使えるわけない。

今頃ゴミステーションにあるだろう。


「来い、木乃」

「え? 来いって……どこに、」

「いいから」

「……はい」


連れて行かれたのは、国語準備室だった。

屋上からすぐ近くにある。


「繋げてみた」

「は?」


見ると、先生のデスクの上に、セロテープでつなぎ合わせたわたしの英語のノートがあった。


「……な……」


なにしてんの先生!?


「なぁ。なんでこんなに英語のノートだけ破られてんの?」

「え……」

「他のはそこまでされてねーじゃん」


カチッとタバコに火を付ける。

わたしから離れ、カーテンと窓を少し開けた。

気を使って換気してくれたのだろう。


「……それは、怒らせちゃったから」

「怒らせた?」


ふう、と窓の外に向かって煙を吐く。


「頼まれて英語のノートを見せたんだけど、その答えが違ってたみたいで。それを授業中に答えて恥をかいた……って」

「んなことで破られたのか」

「……はい」