「……なんでもない」
ごまかして、一旦席に戻る。
自分がいじめられているなんてこと、知られたくない……。
気づいている人はいるだろう。
特に女子なら、英語の時間の出来事でエリカたちがわたしに怒っていることを察してるはずだ。
仕方ない。
次の授業は教科書なしで受けるとして……。
放課後また探そう。
席に戻り、机にかけていた鞄を持ち上げ違和感を抱く。
(……軽い)
中を覗き、唖然とした。
——何も入ってないじゃないか。
教科書やノートだけでなく。
生徒手帳も。
ポケットティッシュすらない。
財布は自分で所持していたのが、不幸中の幸い。
勘弁してくれ。たちの悪い少女漫画か。
ここで、泣き寝入りでもすれば満足?
……そしたらあんたらは納得するの?


