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「すみません、トイレに行っていました」
教室に戻ったわたしは、遅れて授業に出席する。
椅子にかけ
(嘘っ……)
〝あること〟に気がついた。
——机の中身が、すっからかんだ……。
こんなことをするのは、あいつらだろう。
視線をエリカたちの席へとうつすと、愛美と菜々がニヤニヤしながらこっちを見ている。
どこにやったのよ……。
隠された?
まさか、捨てられたの?
わたしの教科書とノートと筆箱……。
近くにいる女子がこっちを心配そうに見ているが、わたしと目が合うと慌てて目をそらした。
……なにか知ってる?
でも、今の様子から関わりたくないのだろうと思う。
教室のゴミ箱に入ってたりするのかな。
だったらはやいとこ取り出さなくては。
数学が終わりると、立ち上がりゴミ箱へと向かって歩く。
(……ここには、ないのか)
ゴミ箱には、それらしきものが入っていないように見える。
「きったなーい」
「ゴミ箱あさってんの?」
愛美と菜々が、そんなことを言ってくる。
白々しいにも程がある。
近くの男子が「委員長、なにやってんの?」と声をかけてきた。


