不敵に笑う会長を残し、教室に戻り

体操着を持って更衣室に向かおうとした、そのとき――。


「素子」


雅人から、声をかけられた。


「……今から向かうのか?」


間もなく授業開始のチャイムが鳴る頃だ。


なのに、体操着袋を持って教室の前にいるわたしは不自然すぎる。


「レオは?」

「さぁ。いつも体育になると消えるし……」

「それ、どうした」


雅人の視線が、わたしの唇に向けられた。


「怪我?」

「……ううん。してないよ?」

「でも。血が」


まさか。会長の――!?


「あ、そうだ。さっき噛んじゃったかも」

「大丈夫?」

「舐めてれば平気。へへ」

「…………」

「そういえばレオがさぁ。雅人をうちのクラスの劇に友情出演させるとかなんとか言ってたよ」

「は? ンなもん出るかよ」

「昼休みに無茶ぶりくるの覚悟しててね」

「……ハイヨ」

「じゃ、またね」

「遅れないようにな」

「うん。ありがと」