「――っ」


それは、口づけというよりは


ただ口を塞ぐためだけになされたような


そんな、キスだった。


「や、」


ガリッと……音がしたような気がした。


わたしが、会長の唇を噛んだときに。


「どうせ初めてでもないだろ。なのに、そんなに抵抗しなくても……」


咄嗟に会長の胸元から取り出した鍵を使って部屋の扉を開けた。


「待て」

「待たない」

「……いいよ、逃げても。君の弱点は見つけた」

「あなたは敵わないよ。センセイには」

「それはどうかな」