「……は?」


狼谷先生が、片手で眼鏡を外す。


「だから。やり返すか?……ってこと」

「っ、」


報復の意味くらい、わかる。


なんてこと言ってるんだアンタは、と。

驚いているわけで……。


「ガキ同士の喧嘩なら口は挟まねーが。これが一方的な悪事だってなら、話は別だ」


なに……それ。


「さすがに放っておけない」


わたしの力になろうとしてくれるの?


だとしても。

教師が、生徒から生徒への報復に手を貸せば大問題になる。


復讐を助長するような発言ヤバすぎる。


(……なにを考えているの?)


「先生、大丈夫……?」

「なにが」

「いや、だって。いつもと違いすぎるから。もしかして、頭がおかしくなったのかなって……思って、」


すると、狼谷先生は、やわらかく笑った。


不意に見せられた笑みにドキリとする。


狼谷にドキドキするなんて、わたし、どうしちゃったの……?


「その言葉、そっくりそのまま返すよ」

「は?」

「木乃って教室では猫かぶってんの?」