なんで、こうなっちゃうかな。


こうならないために。

アイツらの機嫌を、損なわないために。


ノートだって貸してやったのにさぁ。


「……先生」

「ん?」

「誰かに話しますか、このこと」

「いいや」

「そう、ですか」


やっぱり、そうだよね。

先生としては校内にいじめの事実はない方がいい。


このことが明るみに出るなんてことは、避けたいはずだ。


“大人の都合”で、うやむやにされる。


狼谷先生も、所詮は、教師だから。

面倒ごとに、わざわざ関わったりなんてしないんだ。


大人が子供を守ってくれるとは限らない。

むしろ期待する方がバカげている。


そう、頭では理解しているのに。


“知りたがった”クセに

“なかったこと”にされるのが


虚しい(むな)しいと思う、自分がいた。


だったら最初から

一切わたしに関わらないでよ――。


「いつまでここにいるんですか」


はやく、行ってよ。


「木乃」


行けよ。


傍観者。


「報復するってなら、手伝ってやってもいいよ」