「お前……」


副会長にギロッと睨まれる。


……なに?

どうしてそんなに敵視されているの?


「こらこら、お客さん睨まないの。どうぞ、中へ」


会長の助け船で生徒会室に一歩足を踏み入れると、この学校とは思えない空間が広がっていた。


なんて落ち着いた雰囲気の場所なの。


飾ってある花瓶にしても絨毯にしても上品かつ高級そうだ。


不良校の生徒会室とは思えない。


「それで、一年の木乃素子さん。今日は何の用かな?」


(……!)


会長からフルネームで認識されていたなんて。


「えっと、」

「お前は先日の騒動で、何者かのバイクへ乗ったらしいな。報告も受けてる」


副会長が割り込んでくる。


……そうでした。


わたしは表向きには『黒バイクの男に攫(さら)われた』ことになっている。


つまり、一躍時の人(?)となり。


生徒会がわたしのことを知っていてもなんら不思議じゃないんだった。


あのとき近くにいた先生は

わたしが自ら狼谷のうしろに乗ったことに気づいていたと思うんだけど……。


その事実が歪んでそんな噂になってまわったのだ。