この男は、知っている。 わたしが拒絶しないってことを――。 右手を伸ばし、電話の受話器を手に取る。 「はい。狼谷探偵事務所です」 そんなわたしを見て、 “様になってるじゃないか”と言わんばかりに微笑む男にわたしはこの先も従ってしまいそうな気しかしない。