「悪いが、今は木乃に殴られてる暇も悠長に文句を聞いてる時間もない」

「な……」


そんなこと言って、また、目の前から消えてしまうつもりなんじゃないでしょうね……?


「間もなく警察が到着するだろう。その前に俺たちも退却するよ」


(俺……たち?)


そうか。仲間と、やってきていたもんね。


「来るか? 俺と」

「はぁ……!?」

「乗せてやってもいいよ」

「乗せるって……なにに……」

「後ろに決まってるだろ」


わたしが?

黒豹の、後ろに、乗るの?


「そんなの無理に決まってるでしょ……!」


突然現れた謎の黒ずくめのバイク集団にわたしが連れて行かれたら先生たちも同級生も驚くでしょうが。


明日から白い目で見られる可能性、大。


「そうか。それじゃ、ここでサヨナラだ」

「……え?」

「元気でな」


クシャッと頭を撫でたあと


背を向ける、狼谷――。