【素子の髪は綺麗だね】


――古い記憶が、よみがえる。


ほとんど覚えていない。

大好きだった人たちの、記憶が。


「――あ」


ガチャッと扉の開く音とともに、すずかちゃんがやってきた。


「……邪魔した?」


真顔で問いかけてくる、すずかちゃん。


「っ、ちが、」


(はやく離れろ……!!!)


「おい」


すずかちゃんのあとから入ってきた雅人が、目の色を変えてこっちに近づいてくる。


「なにもしてないよー?」


そっとわたしから離れたレオが、両手をあげて『降参』のポーズをとっている。


「ところで青山くん。すずかちゃんと仲直りはできたかい?」

「それは、まあ」


雅人の言葉に胸を撫で下ろす。

話し合いがうまくいったようだ。

想い合っている兄妹がすれ違ったままにならなくて本当によかった……。


「ったく。少し目を離したらこれだ……ケモノかよ?」

「まぁまぁ」

「もう帰れ」

「これでも落ち込んでるんだよ? ボク」

「……はぁ?」

「失恋しちゃった」