用事は済んだ。もう行こう。


「失礼しました」


先生を通り越して準備室から出て行こうとした


……そのとき。


「木乃」


——腕を、つかまれた。


(よっ……呼び捨て?)


こんなの初めてだ。


狼谷先生は一度たりとも生徒を呼び捨てになんてしていなかったと思うけど。


「ひょっとして、見た?」


(……へ?)


「見たんだな」


そう言われて思い浮かんだのは、さっきのあの写真。


「写真、ですか……?」

「ああ」


たしかに見ましたが。

先生の趣味、かわってるなって、思いましたが。


なんですかその態度。

怒ってるんですか……!?


「誰にも言うなよ?」

「えっ……」


別に言いません。

話すような友達も、いないですし。

言いふらす意味だってわかりませんよ。


「もし、誰かに話すっていうなら……お前のこと困らせようと思う」


——はぁ!?


「困らせる……って、なんですか」

「さぁ。どう困らせてやろうかな」


えっと……あの……。


本当に、あなたは狼谷先生なの?

口調も声のトーンも違うのですが。