エリカの周りには、あんなに当たり前のように菜々と愛美がいたのに。
こんなにあっさりバラバラになってしまうなんて。
別れの挨拶もせずに、去るなんて。
……あっけないなぁ。
「もっと遊んでみたかった」
「エリカの『遊び』って遊びじゃないよね」
「遊びだよ。雅人やレオまで味方につけてる委員長の鼻、どうやってへし折ろうかって考えたらわくわくするもん。こんなに楽しい遊び、ある?」
人を傷つけて悦ぶ、狂った女王め。
「だったらどうして転校なんてするの。逃げるつもり?」
「あはは」
エリカが空を見上げた。
「もう、お手上げ」
そういって、肩をすくめる。
「お手上げ?」
「あんな交換条件を提示されちゃったらね」
(……は?)
「交換条件って? なに?」
「あたしがイジメをしていた証拠もあれば、ヤバイ店に関わった証拠もある。“バラされたくなかったら大人しくしておくこと”――それが、条件」
エリカのイジメを暴き、証拠を掴み、あの店に関わったことまで調べあげ。大人しくしてろとまで言った人がいるの?
「……脅されたの?」
「ううん。助けられたの」


