「……わたしは平穏な高校生活が送りたかった」
送ることができれば、それでよかった。
「エリカを敵にまわして送れるわけないでしょ」
「もう、いい。今は、そんなこと願ってないから」
「はぁ?」
「菜々が余計なことしてくれたおかげで……出会いもあったから。感謝しなくちゃね」
わたしの精一杯の皮肉を聞いた菜々が顔を歪める。
「愛美と友達なんじゃないの? なのにパシるようなことして……」
「別に友達なんて思ったことないし。愛美はイジメ甲斐あるんだよね。あの子は、ほんとにバカだから」
菜々にとって愛美は、まるでストレス解消のための道具かなにかのようだ。
……腐ってる。
どうして人を、モノ扱いできるの?
「エリカが学校にきたら、次はどんなことして愛美と遊んでやるか考えておかなくちゃ」
「それなら、考える必要ないんじゃないかな」
「は?」
「だってエリカは、たったいま、菜々のこと友達とは思えなくなったはずだから」
「はは。なに言って……え……嘘?」
菜々が振り返ると、そこには――。
「ふぅん。あたしのことハメたの、菜々だったんだ?」
笑顔を浮かべたエリカが、いた。


