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この日、エリカと愛美が学校に来なかった。
それ以外には先生もクラスメイトもいつも通りで、なにも変わった様子は見られなかった。
数日たっても二人が登校してくることはなかった。
エリカがいなくたってこの教室は、変わらず好き勝手する人たちで溢れている。
ヘッドフォンの音漏れも
早弁も、いびきも、それからメイクもウザい。
それでも以前よりは気にせず授業に集中する力がついてきたと思う。
「待ちなよ」
移動教室で廊下を歩いていたわたしに話しかけてきたのは、菜々だ。
「なにか知ってるんじゃないの」
「なにかって?」
「エリカと愛美が学校に来ない理由だよ」
そんなの、わたしにはわからない。
あの日なにがあったか知らないし、その話を誰かとすることはなかった。
むしろ、なんとなく
触れないようにしてきた。
「本人から聞けばいいでしょ」
「……聞けないから聞いてんじゃん」
聞けない……?
二人と連絡をとっていないってことかな。
「アンタに関わるんじゃなかった」
「は?」
「こんなことなら書き換えるんじゃなかった」


