「助けてくれて、ありがとうございました」


お礼を言うも話を聞いていない狼谷。


「なぁ青山。酒持ってきてよ」


やってきたのは、雅人の家。


雅人とわたしはタクシーに乗ってきたのだけれど、贅沢すぎて料金メーターを見るのが怖かった……。


「この家に酒なんてあるわけないだろ」


家の人、誰も飲まないのかな……?


うちは冷蔵庫を開けるとビールが冷えている。

毎日は飲んでないみたいだけど、おじいちゃんが仕事終わりの一杯を飲むときとても嬉しそうにしている。


「お前、ヤンキーの割には真面目だよな」

「うっせ。あんたは根暗教師の面影どこいったんだよ……つーか、バイクだろ」

「いいのいいの。帰るつもりないから。明日休みだし」


あっけらかんと答える先生。


「いや、帰れよ」

「部屋余ってんじゃねーの。こんな広い家に妹と2人だと」


(……2人?)


「泊めてくれよ。帰るのだるくなってきた」

「やなこった」


妙に仲良さげだ……。

って、ちょっと待って。


「ねえ雅人」

「ん?」

「狼谷先生の本性がコレって知ってたの?」

「知ってたというか……知ったというか。今回の件で」


「そっか」と納得したわたしに「コレっていうな」と軽くチョップしてきた、先生。