わたしのことはなんとでも言え。
だけど家のことをとやかく口出しするな。
おばあちゃんのこと
お前に悪く言われたくなんてない。
「なによ……事実じゃんっ。貧乏人」
愛美がフンと鼻で笑う。
「あのさぁ」
シンとした教室で、一番に口を開いたのは雅人だった。
「あんたが、“愛美”?」
やっば。
雅人、愛美のこと、しめるとか言ってたよね土曜日に。
「そ、そうだよ。どうして名前……」
雅人に名前を知られていることを、180度違う意味で、ポジティブに受け取った愛美の表情が明るくなる。
愛美、あんた逃げた方がいいよ。
いや、まあ、どうなろうと知ったこっちゃないけどさ。
さすがに女の子に暴力は振るわないよね……?
「やっぱりか。俺、あんたに伝えたいことあったんだよね」
ニッコリ笑う、雅人。
……目が、笑っていない。
「えっ? なに!?」
雅人の本音に気づかずに期待する愛美が気の毒すぎる。
「素子のことイジメないでくれる?」
(……!!)
「……青山くん、なんでそんな子かばうの?」
動揺する愛美。
さっきまで幸せそうに笑っていたが、途端に青ざめていく。
雅人がわたしの味方をしたことが信じられないという様子だ。


