私はまだ聖のことをなにも知らない。

知っているのは名前と性別とまだ見たことがない狼男だってことぐらい。


「少し外の空気が吸いたかったのかもね」

私は歩く足を速くして聖の隣に並んだ。


「え?」

「ウサ子とウサ吉。小さな小屋じゃ窮屈だもん。たまには自由に散歩したかったんじゃないかなって」

聖も窮屈に感じていることがきっとある。

だからもし息苦しいのなら、ウサギたちのように逃げてもいいんじゃないかって、たまには遠回りして散歩したりするのもいいんじゃないかって、勝手にそう思っただけ。


「そうだな」

聖のはじめて笑った顔を見た。

何故だか心がざわついて、キュンッと胸が高鳴ったのは気のせいじゃない。