肉の塊をよく見るとウサギの体に……見えなくもない。
はは、まさか。まさかね。
笑って誤魔化しながらも胸騒ぎが止まらない。
すると背後に気配を感じて振り向くと、そこにはいつの間にか昴さんが立っていた。
「茉莉ちゃん、いらっしゃい」
ニコリとメガネの奥から妖艶な笑みを浮かべる。
ビックリしすぎて上手く声が出ない。思わず後退りをするとガタッとキッチンに阻まれて、その反動でまな板の上にあった肉が下へと落ちた。
ぐちゃりとイヤな音。
手を付いてしまったせい私の右手にも血が付着していて、手のひらに赤いものが滲む。
「あーあ、茉莉ちゃんダメじゃないか」
昴さんがそう言って、落ちた肉を拾い上げた。
「せっかく新鮮なものが手に入ったんだから、美味しくたべてあげないと……ね?」
ゾクッとする笑い方。
寒気が止まらない。イヤな考えしか浮かばない悪循環。
「わ、私……か、帰りますっ!」
怖さに耐えられなくなって急いでリビングのドアに向かうと、僅かに開いていたはずのドアがバタン!と独りでに閉まった。



