意識がウトウトとしかけて瞼を閉じかけたその時、カタンッと窓の外から物音がした。

気のせいだと思っても、再びカタンと音が響く。


……なんだろう、風?

白いカーテンに手を伸ばして勢いよく開けるとベランダに立つ誰かと目が合った。

いや、誰かというより黒い物体が浮いていて、
それが不思議と顔のように見える。


「……っ、きゃあああっ!」

思わず絶叫。しかも腰まで抜かしてしまった。


なな、なに?

半泣きになりながらその場にうずくまっていると……。


「おい」

突然腕を掴まれてビクッ!とまた肩が縮まる。


「……やめてっ!来ないで」

その手を振り払おうとすると今度は強めの声で。


「バカ。落ち着け。俺だ」

「……聖……」

何故か聖が私の目の前にいる。しかもここは私の部屋だ。どうして……。


「お前のものすごい悲鳴が聞こえてきたから慌てて……。大丈夫か?なにがあった?」

聖の優しい声に不思議と心が落ち着いていく。

聖は部屋着で、しかも裸足。どうやらベランダを乗り越えてきてくれたらしい。


「今そこに黒いなにかが……」

「黒いなにか?」

「分かんないけど確かにベランダに浮いてたの。それがすごい不気味で怖くて……」

今思い出しても鳥肌がたつ。暫く夢に出てきそう……。