「恋愛感情なんて下らないな。この世で一番不必要なものだ」

「あなたが女嫌いだからって、そんな考えをみんなに押し付けないで」

校則で男女交際を厳しくしたり会話を制限するなんて。霧島くんの私情で縛られた生徒たちは窮屈でしかない。


「はっ。女嫌い?」

霧島くんはそう鼻で笑った。

気がつくと飛んでいったカラスたちが一羽、また一羽と戻ってきて霧島くんの背後に列を作る。

まるで従えてるような感じで気味が悪い。


「俺は女嫌いじゃない。人間が嫌いなんだ」

カラスたちの視線と霧島くんの視線。金縛りみたいに身体が動かない。

このままじゃ飲み込まれると思って自分の爪で思い切り腕をつねった。それは血が滲むほどだったけど、縛られてる感覚からは解放された。


「へえ……」

霧島くんは感心したような声を出す。


「あ、あなたは何者!?」

人間が嫌いなんて、まるで自分が人間じゃないような言い方だ。

霧島くんはなにも言わずに再び私に近づいてきて、その足が通りすぎる直前。


「余計な詮索はするなよ。あの三兄弟と少しでも一緒にいたいなら……俺に逆らわないほうがいい」

ゾクッとするような声で、霧島くんは図書室を出ていった。